ミニマリストのノマディズム

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ミニマリストのノマディズム

移動とプロジェクト、謎チーム

ミニマリズムは、モノを減らすことだけではありません。それは自分にとって本当に必要なものを見極め、それに集中する生き方です。そして、その延長線上にあるのがノマディズムというライフスタイルです。

近年、ノマディズムが注目を集めています。たとえば、アメリカの研究者Ralph Borsodiは、20世紀初頭に「decentralism(地方分権主義)」という概念を提唱し、都市生活に縛られない生活の可能性を探求しました。この考え方は、現代のノマドライフスタイルと深くつながっています。また、国際労働機関(ILO)のレポートでは、デジタルノマドの台頭が新しい働き方と地域活性化に与える影響について言及されています。

ちょうどコロナ禍の頃、東京と千葉で二拠点生活をしていたことがあります。それぞれの場所に賃貸物件を借りて、制作に集中するためでした。千葉の家は海も近く、自然豊かで静かな場所だったので、確かに生産性は上がりました。一つの場所では得られない視点やアイデアを持ち込むことができ、集中力も増したのです。しかし、それには大きなコストが伴いました。家賃や光熱費、掃除やメンテナンスの維持費、移動費……。それらが単純に二倍になることで、生活の自由度がかえって減ったように感じたのです。この生活スタイルを続けることに持続可能性を見いだせなくなりました。そもそも部屋を2つ持つのは、ミニマルではないと思いました。

プロジェクトベースのノマドライフ、深い関わりを生む移動

現在、僕が魅力を感じているのはプロジェクトベースのノマドライフ。このスタイルでは、特定のプロジェクトのために同じ場所を何度も訪れるのが特徴です。一時的な滞在ではなく、定期的に通い、そこでの活動に根を張る。その場所や人々と深く関わることで、自分の生活にもプロジェクトにも厚みが生まれるのです。

例えば、近年取り組んでいるのは、愛知県の南知多での農業プロジェクトです。文化人類学の先生に声をかけて頂いたのをきっかけに、この街に通い始めて早2年半ほどになります。町の畑の一角をお借りして枇杷を育てており、年に三回ほど訪れています。作業内容はその時期によって異なります。剪定、袋掛け、収穫という一連のプロセスをこなすのですが、今回の滞在では剪定作業がメインです。このプロジェクトに参加することで、季節や自然の移り変わりを体感するだけでなく、自分の手で何かを育てるという貴重な経験を得ています。

地域と人との繋がり、偶然が生む親近感

南知多での農業には、さまざまな背景を持つ人々が集まります。年齢、職業、国籍……すべてがバラバラです。前回は、海外からの留学生が参加していました。文化や言語の違いを超えて一緒に作業をする時間は、新鮮で刺激的です。何よりも、毎回再会するたびに感じる親近感は特別なものです。まるで年に数回顔を合わせる親戚のような感覚です。

興味深いのは、こうしたプロジェクトが地域社会にも貢献していることです。たとえば、南知多の農業プロジェクトは地域の観光や産業を支える一助となっており、そこに関わる僕自身も地域の一部になった感覚を持つことができます。この点は、地域社会とのつながりを深めるノマディズムの重要な側面かもしれません。毎回お世話になっているゲストハウスを中心とした、ある種のコミュニティのようなものも形成されています。傍から見ると、謎の集まりですが、既成的集団やグループには無いグルーヴが生まれています。

地元と似た風景への親近感

南知多という場所には、僕の地元である長崎に似た親近感を覚えます。港町特有の穏やかな雰囲気や潮の香り、停泊している小さな漁船と、海を隔てて遠くに見える水平線や島の風景、そのすべてが僕を落ち着かせてくれます。長崎と南知多、地理的には遠いですが、共通する景色や空気感が自分の中に特別な意味を生んでいる気がします。

こうした場所に対する親近感は、移動を重ねる中で新たな発見につながることが多いです。多拠点生活の中で、どの場所が自分にとって特別な意味を持つのか。それを見つけることも、ノマディズムの一つの楽しみです。

ノマディズムがもたらす可能性

プロジェクトベースのノマディズムの魅力は、単に移動するだけではなく、その場所と深く関わることにあります。地域の人々と協力し、時にはその地域が抱える課題にも触れることで、自分自身の視野が広がります。また、こうした経験は、クリエイティブなインスピレーションにもつながります。実際、僕が南知多で得た経験は、自分の制作活動にも大きな影響を与えています。

また、ノマディズムのスタイルは、自分の時間やエネルギーを効率的に使うことを可能にします。荷物を極限まで減らし、必要最低限の持ち物で移動することは、身体的にも精神的にも軽やかさをもたらしてくれます。これはミニマリズムの延長線上にある生き方とも言えるでしょう。

これから

南知多でのプロジェクトはまだ続きますし、来年はさらにもうひとつ新しい拠点が増える予定です。それがどんな場所で、どんなプロジェクトになるのか。今はまだお話しできませんが、きっとまた新しい出会いや発見があるはずです。そのような過程を、映像や写真や文章を通して皆さんと共有していけたらと思っています。

ミニマリズムとノマドライフの実践。これらが融合することで、ますます自由で充実した生活を送ることができています。このような生き方に興味がある方は、ぜひコメントやメッセージでご意見を聞かせてください。

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